鱸由美さん
イギリス中部ウエスト・ヨークシャーの静かな街、キースリーでILKボランティアとして4ヶ月を過ごされた由美さん。イギリスボランティアプログラムの参加理由は「不自由さを感じたくて」その目標どおり、ここで不自由ながらも、より自由に生活を送っている。
由美さんはロンドン、サウサンプトンで2ヵ月半の英語研修の後、このILKに派遣された。ILKとはIndependent
Living Keighleyといって、親元を離れひとり立ちしたいが、
身体的に障害などを持つために誰かのヘルプが必要といった若者のトレーニングセンターの役割をする。由美さんがお手伝いしているユーザーも、将来的にはヘルパーとともにひとり立ちをして暮らす計画をしている。ここでユーザーたちはPA(パーソナル・アシスタント)にまったく依存してしまうのではなく、自分で出来ることは自分でし、手助けが必要なときには、PAが安全で負担のかからないようにヘルプを依頼してゆく、ということを学んでいっている。
由美さんのILK到着日は、今年がボランティア・イヤーということがあって、大々的にパーティーが行われていた。初めての土地で、しかもDJを呼んでの大騒ぎにびっくりし、これがまず第1の不自由だった。誰もが暖かく迎えてはくれるものの、学校での英語とは異なり、これは生のイギリスかと飲み込まれるようであった。また、このパーティーは夜中の4時まで続き、楽しむ時はとことん楽しむという文化にも直面させられた。まず由美さんが思ったのは「他力本願ではだめ、自分で何とかしなければ」ということだった。
子ども達の学校がある学期中は、学校を終えて4時からの仕事、休み中は朝から仕事が始まり、子どもを自宅まで送っておえるのが大体8時ごろ。子どもとどのように時間を過ごすかは、子どもと話し合って決めてゆく。もちろん先に述べたように、この「Be・Friending」は、子ども達が他の子ども達に交わり、友達を作ってゆくことが大きな目標の一つでもある。よって、地域のスポーツセンターや公園に出かけて、他の子ども達と一緒にサッカーをして積極的に交わるように心がけられている。また週によって、天候によって活動内容は異なってくる。映画、スイミング、エディンバラ観光などなど。1週間の予算が一人約15ポンドなので、その範囲で一緒に食事や(主に子どもの好きなマクドナルドに行くことが多い)有料の施設を利用することができる。また、予算がかさむような計画があるときは、ある週は節約し次の週にそれができるようにと配慮もされている
仕事が慣れないうちはひたすらプレッシャーを感じた。ボランティアは他にイギリス人、ガーナ人などで外国人もいた。由美さんより後からきたドイツ人も、皆とにかくよく英語を話す。それだけでもひるんでしまった。このような環境にいれば、さぞ英語が上達すると思われがちだが、それはかなり大きな不自由であり、負担であった。日本語を話すチャンスはまったくなし。しかもユーザーのしてほしいことが理解できないことも、自分の気持ちを伝えきれないこともしばしば。知らないうちにどんどんストレスはたまっていった。
ある日、由美さんは「私にはゆっくり日本語を話すことが必要。だから友達に会いに行く」とユーザーに宣言し出かけた。久しぶりに日本人の友達と会い、普段のプレッシャーから逃れ、ゆっくりと有意義なときを過ごした。このようなリラックスした時間をもてたことで、物事を落ち着いて考える余裕が出来た。また、ユーザーもこの由美さんの気持ちを良く理解してくれ、より親近感がもてたという。
この経験から由美さんが学んだことは、「何でも自分で言わなければならない、しなければならない」と言うことだった。例えば、ILKのミーティングでも最初は受身に聞いていて、わからないことも流しがちだった。このままでは、いつまでたってもPAの一員としてプロジェクトに参加できない。しかし、わからないことはわからないといえば、わかるように説明してくれる。そのことで自分自身もこのプロジェクトに参加しているPAの一員である責任が感じられ、やる気もでてきた。わからないことはわからないと、出来ないことはできないと言えること、これは自分の行動に責任を持つということ、と由美さんは考えるようになってきた。
現在はこのキースリーで4ヶ月過ごし、生活にも環境にも、そして仕事にも慣れてきて満足度100%と由美さんは言う。由美さんのお手伝いは、本当にユーザーが必要なときに必要なことをするということで、過度に手伝ったりはしない。お茶飲む?何か食べる?と気をきかせて言うことはあるが、それもお互いにお互いのことがわかってきたから自然にもたれる会話になってきた。また最近はユーザーのダンスを習うということで出かけていったのだが、バスを乗り継ぎ乗り継ぎで、着いた頃には二人とも疲れ果てて、十分楽しめないということがあった。ユーザーも「もう二度と行かない」といっていたが、由美さんは近くで習える新しい情報を教えてあげたりと、友達のように自然に付き合っていっている。
ユーザーがここで自立することを学んでゆくように、由美さん自身も違った角度から自立ということを学んでいる。日本に暮らすことと異なり、イギリスでの生活は言葉、文化の不自由さがあり、時には落ち込むことがある。しかし、日本では感じないような不自由さを感じてみたい、そこで自分自身がひとつずつ困難を乗り越えるような体験がしたいという由美さんの願いが叶い、それを克服してゆきつつある由美さんにとって、この不自由さはかえって自由への扉を開いてくれている。現在、ボランティアの空時間に、英語レッスンだけでなく、ヒーリング、太極拳などのコースにも通いイギリス生活を満喫している由美さんである。
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