海外ボランティア セブ島

フィリピンの貧困事情
広がる都市の貧困
1988年にCECを設立後、私(代表の池頭です)は約38年いろんなアジアの国々を訪問してきました。 私が訪問した場所で、強く社会の格差を感じたのがインドとフィリピンです。
フィリピンの貧困がひどい理由は格差社会が他のアジアの国々と比べて大きく広がっているからだと感じます。 お金持ちは一般の日本人の感覚からしても超金持ちだし、貧困の家族は信じられないようなひどい暮らしをしています。 フィリピンでこんなに格差が広がったのは何が原因なのか調べてみました。(私の意見も入ってます。)政府関係のWEBが発表していることと、民間のWEBでは数字や程度に大きな違いがあります。政府としてはフィリピンの貧困を少しでも小さく見せたい意図が感じられます。
2025年フィリピンの貧困状況
自分が貧困だと感じる人たちが増加傾向
ソーシャル・ウェザー・ステーション(SWS)の調査によると、2025年4月時点で約1,550万世帯のフィリピン人家族が自らを「貧しい」と感じていることがわかりました。 中間選挙の1カ月前、自らを貧困と評価する家庭の割合は2025年で最も高く、55%に達しました。この数字は月を追うごとに徐々に上昇しています。
SWSの調査によると自分たちを貧困とは思わない家族は32%で、過去最高水準である36%からは減少しています。 一方で、「境界線上(どちらとも言えない)」と答えたのは12%で、年初からほとんど変化がありません。 この調査は2025年4月11日から15日にかけて実施されました。
地域別では、メトロ・マニラを除くルソン地方(バランス・ルソン)以外のすべての地域で「自己評価による貧困」が上昇しました。最も高かったのはミンダナオの70%、次いでビサヤの67%、メトロ・マニラの45%、ルソンの44%となっています。
SWSのグラフによれば、3月のインフレ率の鈍化や2月の失業率の改善といった国家統計庁の最新データがあるにもかかわらず、自己評価による貧困率は上昇を続けています。
「食糧貧困層」 ― NEDA長官説
2025年予算案に関する上院公聴会の初日、「食糧貧困層(food poor)」と分類される基準について質問された国家経済開発庁(NEDA)のアルセニオ・バリサカン長官は、次のように答えました。 「2023年時点で、5人家族の月間食費の基準額は9,581ペソです。これを1人当たりに換算すると約64ペソになります」とバリサカン氏は述べました。
この金額は、1人1日3食をまかなうために必要とされる最低限の食費を示しています、つまり、1日3食に64ペソ(約180円)未満しか使えない人は「食糧貧困層」に分類されるという発言です。
発信元 (この数字より上なら貧困ではないのか?今の物価から考えて妥当にはおもえません...)

2024年フィリピンの貧困状況
貧困率が減っている
フィリピンの貧困率は2023年のフィリピンの貧困率は15.5%と統計局が発表しました。2021年の18.1%から15.5%に低下しましたが、食品価格の上昇が貧困者数の減少を抑制したと政府の統計局が8月15日に発表しました。「もし食料インフレがもっと低ければ、貧困の減少はもっと大きくなっていたでしょう」と、国家統計官デニス・マパ氏は記者会見で述べました。
フィリピン統計局(PSA)によると、貧困線以下で生活する人々は1,754万人で、2年前の調査より240万人減少しました。PSAは、基本的な食料や非食料品を購入するのに十分な収入がない人々を「貧困者」として定義しています。
政府は、2028年にフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領の任期が終わるまでに、貧困率を9%に減らすことを目標としています。

2023年フィリピンの貧困状況
増えている貧困率、2500万人の貧困者
2023年最初の四半期の貧困率は、22.4%、約2524万人と推定されます。 5人家族が最低の生活を送るために必要とされる収入は月に13,797ペソとなっています(毎年上がってきています) 最低限度の食料品さえ買う収入がない人たちは8.7%、約979万人と推測されています。 上記の資料はフィリピン統計局からのものです。 https://psa.gov.ph/statistics/poverty

2022年コロナから3年 進む格差社会
2000万人の貧困者
The Philippine Statistics Authority (PSA) 2022年9月発表によると現在350万世帯(2000万人)が貧困に陥っていると発表しています(貧困率18.1%)が、これはかなり抑えられた数字であり、IBON(IBON Foundationは、フィリピンを拠点とする研究、教育、擁護のプログラムを提供する非営利の研究、教育、情報開発機関) が最近の Bangko Sentral ng Pilipinas (BSP) データから推測したところ、フィリピンの2600万世帯中1940万世帯が貯金をしておらず、物価の変動で影響をうけると発表しています。
フィリピンの2022年の後期GDPの伸び率は7.7%と急上昇しています。日本人の感覚だと、一般庶民の経済が立ち直ってきたのだと考えてしまうのですが、フィリピンではすこし事情が違うようです。前年がコロナのためにどん底にあった時期からやっと経済活動が再開してきたためにGDPが上昇するのは当然のことなのですが、特徴としては富裕層によるリベンジ観光、リベンジ消費など、コロナ禍で外出できなかったお金持ちの人たちが一気にお金を使いだしたことによる伸びであると指摘されています。生活に苦しむ人たちの家計状況は全然良くなっていないのが現実です。

進まない政府からの援助
IBONは、約1,900万から2,000万世帯が、パンデミックが始まってからの収入減を補い、今後起こるさらなる物価上昇に備えるために、3万ペソの支援を必要としていると分析しています。
しかし政府は、わずか3,000ペソ(月500ペソ×6ヶ月間)の現金給付(TCT)を1240万世帯にしか考えていなおらず、2022年7月現在、主にPantawid Pamilyang Pilipino Program(4Ps)の受益者と年金生活者の590万世帯にしか支給されていません。
現金が支給されなかったのは、今回が初めてではないのです。税制改革(TRAIN)法には、最貧困層1000万世帯を対象に2018年から2020年にかけて無条件現金給付(UCTs)を行うという規定があったにもかかわらず。2018年の給付は何カ月も遅れました。しかし、さらに悪いことに、2019年と2020年の給付額の3,600ペソのほとんどは、支給されておらず、2021年末の時点で452億ペソの未払い残高となっています。
フィリピンの貧困の原因
フィリピンの貧困ライン
2022年のフィリピンの貧困率 18.1% これは貧困ライン以下の国民の割合です。フィリピンの貧困ラインは5人家族1世帯当たり1カ月当たり12,082ペソ(2021年前期)と発表されています。REUTER しかし、実際にはより多くの人々が貧困に苦しんでいるというのが民間機関による調べです。IBON

植民地時代の負の遺産|地方貧困層
フィリピンがスペインに支配されていた時代(1521~1899年)、多くの農民は自分の土地を持たず、大地主から土地を借りて作物を育て、その見返りとして「小作料(お金や収穫物)」を払っていました。この「小作人」と呼ばれる農民たちが国の大部分を占め、一方で土地をたくさん持つ大地主は少数しかいませんでした。このような不公平な土地の持ち方が、農業の発展を妨げ、農村の貧しさの原因となっていました。 その後、アメリカによる統治(1899~1942年)になっても状況は変わらず、むしろ貧富の差はさらに広がっていきました。こうした土地やお金の格差は、今のフィリピン社会にも大きな影響を残しています。
たとえば2009年には、1日2ドル(当時の約200円)以下で生活している人が3,820万人もいて、これは当時の人口の約42%にあたります。その後、経済成長によってこの数は減り、2018年には約500万人まで減少しました(世界銀行のデータより)。しかし、物価も上がっているため、すべての人が生活しやすくなったわけではありません。特にコロナの影響を受けた2022年以降は、また貧しい人が増えています。
私たちが活動しているセブには、Ayala(アヤラ)モールのような大きなショッピングセンターがあります。このモールを作ったアヤラ一族は、もともとスペイン統治時代の支配層(エリート)で、今もフィリピンの経済を動かす大企業「Ayala Corporation(アヤラ・コーポレーション)」を運営しています。この会社は、教育や不動産、銀行、通信、水道、電気、IT、医療など、フィリピンの生活を支えるさまざまな分野で活躍しています。アヤラ一族のように、昔からの大地主や支配層が、今もフィリピン経済の中心にいるのが現実です。このような歴史の流れを知ることは、フィリピンの貧困や格差の問題を理解するうえでとても大切です。

農地改革が貧困解消の鍵だが・・・
農地改革がフィリピンの貧困を解消するための大きな手段となります。 これはフィリピンの政府が地主から土地を買い取り、小作人として働いていた農民に配分することです。農民は一生懸命働き、そこでとれた農作物を売り生計を立てることができます。 この農地改革が貧困を無くすための一つの道筋になります。しかしながら道のりは遠いものでした。フィリピンが独立後に農地改革を進めようとするのですが、議会の力が強い政治制度のなかでは大統領が提出した過去の農地改革案はごとごとく骨抜きにされました。政府の高級官僚や現場の政府職員も本気で取り組むことはありませんでした。彼ら自身が地主である場合も多かったからです。
現状としては、フィリピン政府の『総合農地改革計画』により、貧困層に属する人にも土地配分の恩恵を受けることができたのですが、経済的支援が遅れており、農地インフラが進まない状況です。1人あたりの耕作面積が広く、機械化など進んでいない状況では長く小作人として生きてきた農民の自主性や、やる気にも問題があり、せっかく配分された土地がいつのまにか手放してしまって地主の持ち物に戻ってしまうケースもあります。

都市での貧困
私たちの活動するセブ市内のスラムに住む住人はみんな貧困です。その多くの家族は田舎を持っています。農民としての暮らしが厳しく、良い仕事を求めて都市に出てきたのだけど思ったように良い仕事に就けず、最終的にスラムで暮らすことになるパターンが多いです。
貧困世帯の家族のお父さんの仕事はその日限りの日雇いの仕事(道路工事、建設現場、トライスクルの運転手、港湾荷役作業員等)です。雨が降ったり台風、船が来ないときは仕事がありません。ましてコロナ感染期間はロックダウン状態が続き、まったく仕事がありません。もともと預金もないので、あっという間にその日の食べ物に困ります。
5人家族の生存に最低限必要な1か月当たりの食費(食費のみです)は2015年の時点で5513ペソ(当時の換算額で約11,000円)とされています。しかし、2021年現在、私たちが活動しているスラムの住人のなかで1か月の全収入が5000ペソを超える家族はほとんどいないのが現状です。コロナになって格差はさらに大きくなりました。

賃金が物価に追いつかない
フィリピンは経済成長が続いています。つまり、少数の人たちがどんどん金持ちになり、一般人はそれほど以前と変わらない、物価はどんどんあがっているために生活は苦しくなるという連鎖が貧困への入口になります。
先述しましたが大きなショッピングセンターは外国系の資本でできているためそこで働くフィリピン人の従業員は大土地所有制度時代の「小作人」と同様に賃金が少ないです。セブの一般のショップのスタッフの賃金は1日8時間働いておよそ1,000円です。大阪の1/8の賃金です。(2022年当時の金額をその時のレートで換算)
しかし物価はそこまで安くありません。電気代は日本よりも高いし、マクドナルドの商品の値段も日本と同等です。つまり物価に比べて賃金が追いついていないのがフィリピンの貧困問題の原因の一つだと思います。雇用主だけが儲かるような社会のシステムがまだ続いているかのようです。これは最終的には政府の政策として取り組まなければ解決しないものです。

貧困が教育を妨げる 230万人の子供たちが学校に行ってない
2020-2021年の生徒数が、その1年前にくらべ230万人少ないのだそうです。コロナの為に多くの家族が子供を学校に行かせることができなくなったのが原因だとされます。 https://philippineslifestyle.com/students-not-yet-enrolled-gatchalian/
私たちが活動しているスラムの家族の中にも、今年は通学が禁止され、オンラインやプリントでの授業だからもう子供は勉強していない(drop outです)子供たちがいます。オンラインの授業を受けるための設備投資ができない。プリントだけの自習では学べないし、遊んでしまいます。 心配なのは、来年度も学校に行かず、そのまま学校中退として社会に出てしまうことです。
セブの貧困の様子
フィリピンでは今も多くの人が貧困の中で暮らしており、十分な食糧や飲み水、衛生環境の整った場所で生活できていないのが現状です。


ゴミ山スラムで暮らす家族、母親が話してくれました。1日働いて家族の収入が200ペソ程度です。雨の日は働くことができません。だから家族1か月の収入は5000ペソにも届きません。食費を抑えるために、ゴミ山の近隣の池で貝を獲って家族で食べています。その池はゴミ山からの汚染浸水液が流れ込む危険地帯だということをもちろん知っています。


墓地で暮らす家族の収入も低いです。母親が一人で周りの家族の衣類を洗濯し、それだけが家族の収入です。兄弟は一緒に暮らすことができず、田舎に住み、娘が一人だけ両親とセブに暮らし、奨学金を得て大学に通学しています。大学を卒業し、一般企業や地方の行政機関に就職して家族を貧困から救出することがその子の強い目標になります。