フィリピンの貧困層の医療体制

海外ボランティア セブ島

フィリピンの貧困事情(医療)

貧困家庭の食生活と病気

フィリピンセブで2006年からもう15年以上貧困層の人たちとのつながりがあります。 現地NGOを運営し、貧困の子供たちの教育支援をするうえで子供たちの健康管理は大事な要素になります。 セブで活動をしている中で気が付いた貧困層の人たちが罹る病気や、どんなところで治療を受けるかなどに関してまとめました。

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貧困家庭の食生活と病気

栄養不足・糖尿病 

food
私たちがサポートするスラムの家族の夕食メニューです。 ご飯に野菜の汁をかけて食べるシンプルな料理です。このような食事がほぼ毎日続きます。特にコロナ禍では父親の仕事が無くなり家族は毎日のコメも尽きてしまうことがありました。たまにお金が入ると、干し魚や缶詰を買ってきて、ご飯に載せて食べることができます。

フィリピンではサトウキビ生産が多く砂糖を使った料理やお菓子類も多いので大人も子供もフィリピン人の人たちは甘いものが好きです。つい食べてしまいがちになります。サリサリストア(貧困地区にもある雑貨屋)には甘いジュースが安くで売られています。暑いのでつい飲みすぎてしまう傾向もあると感じます。

食事はお米ばかり食べ、甘いお菓子を食べ続けると栄養バランスが崩れてきます。その結果、貧困層でも糖尿病にかかるリスクが高くなってきます。

貧困のひとにも肥満はあります。外は暑いので、近い距離でもトライスクル(三輪車でドライバが自転車をこいで横に客を乗せる乗り物)を利用するという歩かない生活文化があります。また、体に良くないということは知っていてもダイエットしようという傾向があまり見られないです。

貧困層の人たちはファスト・フードは普段はめったに食べていません。単純に高価だからです。セブのマクドナルドでビッグマックセットを頼むとおよそ480円します。現在セブでは一日の最低賃金の日当(8時間働いていただけるお金が)はおよそ960円です。だからビッグマックセットを一つ買うと、1日の賃金の半分が無くなってしまうからです。

脚気(かっけ) 

育ち盛りの子供たちはいつもおなかが減っています。だから食べるコメの量が多いです。フィリピンでは米作が盛んなので、お米は安く買えるし、腹持ちが良いので貧困層の家庭もコメだけは買って食べます。というより、貧困層の家族の食卓にはコメしか食べるものがない時も多いのです。炭水化物の摂取量が多く、野菜と果物の摂取が少ないため、ビタミンやミネラルの摂取が十分ではなく、栄養失調を引き起こします。白米「だけ」食べていたのではビタミンBが不足し、脚気になる人たちも今まで何人か見てきました。

心臓病

1億100万人のフィリピン人の死因トップが心臓病です。フィリピン人の成人の37パーセントが高血圧であると言われます。 そして高血圧になる原因は、不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒など、貧困層の人たちに当てはまる生活習慣に起因します。フィリピン人は油っぽく塩分が多い味付けが好きな 点も心臓病が多い原因となっているのでしょう。そして貧困層のひとたちは血圧を測る測定器などもっていませんから自分が高血圧ということを知りません。

虫歯 

貧困層では歯磨きの習慣がないために、虫歯の子が多いです。治療費や治療技術も低いので虫歯になると抜歯するのが一般的です。だからまだ若いのに歯が抜けている子供を結構見かけます。私の周りでも15歳の貧困の少女が虫歯のために総入れ歯をしています。毎年2月ごろ横浜から歯科医師団が20年以上セブで貧困の家族向けに無料の歯科医療を行っています。

スラムの環境から起こる病気

スラムは都市部にできる貧困層の家族の密集地帯です。この場所ではさまざまな健康リスクがあります。

スラムに住んでいる人たちは下痢性疾患、結核、寄生虫感染症、デング熱、栄養不良などの病気が高い割合で罹ります。

きれいな水は購入しなければいけません。だから雨水などを生活用水として利用することもあります。スラムには上下水道が無いのでトイレは共同になりますが、世帯の数より圧倒的に少ないためスラムの人たちは隠れてその辺で用を足します、衛生環境が非常に悪くなります。

スラムの家は危険な場所に建っています。大きな車が行きかう道路沿い、川の岸などです。大気汚染が悪く喘息などの呼吸器疾患を患うこともあります。

5歳までに亡くなる子供の数(2017年) 

UNICEFの統計によると5歳までに亡くなる子供の数は日本の場合1000人中3人とされています。フィリピンでは1000人中28名です。しかし、スラムではこの割合が一般の地域の3倍高いとされています。

貧困層が病気になったら

お金が無い貧困層の家族が病気になったらまず頼るところは地元のBHS means Barangay Health Stations です。 BHSとはバランガイ(最小限の行政区)にあるクリニックです。ここでは貧困の人たちが無料で医療を受けることができます。

医療制度

先日海上スラムの女の子がさびたクギを踏んでしまい足が大きくはれ上がりました。 このままでは破傷風になる可能性があったので、BHSに行って破傷風予防の注射を受けにいきました。

ここには医師は常駐しておらず、看護師、助産師、ヘルスワーカーが住民の健康をチェックし、必要があればより高次機能病院へ紹介するシステムです。 医師が来るのが週に1度とか2度ぐらいなので、いつも診察してもらえるとは限りません。そのため貧困の人たちは公的な病院で手当を受けることになります。

病院

セブ市内ではCEBU CITY MEDICAL CENTERやVicente Sotto Memorial Medical Centerで無料で診断してもらえます。 沢山の病人が外来でくるため、長く待たされることになりますが、それでも無料で診てもらえること自体は思いのほかフィリピンの医療体制が充実していると感じる点です。

Philhealth (Philippine Health Insurance Corporation)は医療保険です。フィリピンで就職する際に加入が必要になります。貧困の家族はなかなかこの保険には加入していませんが、この保険に加入していると医療費がその病気の内容に応じて安くなります。たとえば透析が必要な場合、一回の透析で3500ペソ必要なものが750ペソで済みます。

活動の様子はFacebookやInstagramでもご紹介しております。

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